スクリーン印刷の基本と標準 

ペーストプロセス理論

スクリーン印刷の4つのメカニズム

スクリーン印刷のメカニズムを、次の四つに分類して考えると、理解が深まります。
  @スキージによる版上インキ・ペーストのローリング
  Aスクリーン版開口部へのインキ・ペースト充てんと掻き取り
  Bスクリーン版の反発力による版離れ
  C基材の上でのインキ・ペーストのレベリング又は形状保持
ローリングのメカニズムは、インキ・ペーストをスキージ移動により、版上でローリングさせることで、均一な性状にするものです。均一な印刷品質を得るための重要な前提条件となります。間違っても「ローリングの下向きの力で、インク・ペーストを版の開口部に充てんする」と考えるべきではありません。このことは、スキージの角度を垂直にして、ローリングさせても印刷できないことからも理解できます。
充てんと掻き取りのメカニズムは、スキージのアタック面でインキ・ペーストを版開口部に充てんし、余分な版上のインキ・ペーストをスキージのエッジ掻きとる動きです。掻き取りの深さが、ベタ印刷での印刷膜厚に影響を与えます。
版離れのメカニズムは、版開口部に充てんされ基材表面に密着したインキ・ペーストを、スキージの移動に合わせて、スクリーン版の反発力を利用して引きはがすものです。スクリーン版の反発力がインキ・ペーストの基材に対する粘着力より小さいと版離れが遅れる不具合が発生します。
レベリング又は形状保持のメカニズムは、基材上の印刷されたインキ・ペーストが自らの粘弾性や濡れ性の影響でレベリングしたり、形状保持をするものです。特に基材の表面状態の影響を受けます。
充てん、掻きとり、版離れのイメージ図を示します。
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4つの印刷条件の適正化

スクリーン印刷の4つの条件は、次の考え方で適正化します。
@クリアランス 版離れに影響を与える最も重要な条件です。前提条件である、メッシュ強度、版テンションが適正であれば、スクリーン枠内寸の1/300とします。この値であれば、10000ショットの印刷でもスクリーン版はひずみません。
Aスキージ印圧 スクリーン版上のインキ・ペーストを均一に掻きとるための十分な印圧が必要です。押し込み方式では、印圧は、1.0mm〜2.5mm程度、エアー圧方式での実荷重では、スキージの長さ1cmあたり、400〜800グラム程度です。
Bスキージ角度  充てん力を増減する最も重要なパラメータです。通常印刷では、80〜60度。高粘弾性ペーストや段差基材への印刷では、55度〜35度。穴埋め印刷では、30度〜15度とします。
55度以下の角度の場合には、「斜め研磨スキージ」を使用することを推奨します。

 

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Cスキージ速度 充てん力を増減できます。にじみやすい傾向の場合は、速度を速くし、かすれやすい場合には、速度を遅くします。一般的に高粘度ペーストでは、50〜100mm/sec,低粘度インキでは、200mm/sec以上で印刷します。印圧が低い場合、スキージ速度が速すぎると膜厚均一性が低下することがあります。

2つのスキージ印圧設定方式と適正印圧

スキージ印圧の設定方法には、スキージゴムの変形量を制御する「押し込み方式」と、スキージの押し圧を管理する「エアー圧方式」があります。前者は、長さの単位のmm、ミクロンで管理し、後者は、圧力の単位のMpaや重さの単位のkgfで管理します。
必ず片方の方式だけを使用し、絶対に併用しないでください。
「押し込み方式」では、エアー圧は、装置最大圧に固定し、押し込み量だけで管理してください。
「エアー圧方式」では、押し込み量を5mm程度に大きい値で固定し、エアー圧だけで管理してください。
スクリーン印刷は、均一な厚みのスクリーンメッシュをスキージと基材との間のスペーサーとして印刷する方式であり、適正なスキージを用い適正な印圧で印刷すれば、必ず±5%以内の印刷膜厚均一性を得ることができます。このことから、「『適正印圧』は、印圧を徐々に高めて、印刷膜厚均一性が±5%以内になる印圧範囲である。」とすることができます。
適正印圧は、押し込み方式では、1.0mm〜2.5mmです。エアー圧方式では、スキージ長さ1cmあたり、400〜800グラムが適正です。
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なお、スキージストロークによる印刷画像の変形は、印圧が高いほど大きくなりますので、寸法精度が厳しい場合は、適正印圧範囲内で比較的低い印圧で印刷してください。
適正印圧より低い「低印圧印刷」では、印刷均一性が損なわれることや、高粘度ペーストでの断線のリスクがありますので注意が必要です。

スクリーンメッシュの強度指数と紗張り

エレクトロニクス業界でよく使用しているステンレスメッシュとポリエステルメッシュの強度指数と推奨テンションは、以下の通りです。
 
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開口率が大きいメッシュは、メッシュ数が同じでも線径が小さくなり、強度が低下します。また、インキ、ペーストの吐出性が高くなり、にじみやすくなるため高精細印刷にはお薦めしません。
紗張り方法には、印刷用のメッシュをスクリーン枠に直接張る「直張り」と、支持体メッシュで印刷用メッシュの外周をつないで張る「コンビ張り」があります。コンビ張りの製造方法には、先に支持体メッシュを高テンションで張り、印刷用メッシュをつなぐ「先張りコンビ張り」と、予め支持体メッシュと印刷用メッシュをつないだコンビシート作り、直張りの要領で紗張りする「ダイレクトコンビ張り」があります。寸法精度が厳しいスクリーン版には、「ダイレクトコンビ張り」をお薦めしています。

インキ・ペーストの印刷性能

ペーストプロセス理論では、スクリーン版や印刷条件が適正であればインキ・ペーストの印刷性能で印刷品質が決定されると考えます。インキ・ペーストの印刷性能を判断するときに次の5つの項目に注意をして観察すれば、判断しやすくなります。
1.分散安定性 通常インキ・ペーストには、フィラー、顔料という微小な固形物が含有されています。分散とは、フィラーの粒子一粒一粒が液体である樹脂の中に独立して存在させるものです。インキ・ペーストは濃厚分散系ですので高い分散技術が必要です。分散安定性が悪いインキ、ペーストで印刷パターンから過剰な分散剤などが染み出すことがあります。
2.揮発性 多くのインキ、ペーストには、希釈のための溶剤が含有されています。溶剤は、その蒸気圧の大きさで揮発性が決まります。低温乾燥のために揮発性が高い溶剤を含有したインキ・ペーストの印刷の場合は、印刷途中でスクリーン版の開口部のエッジ部が乾燥し、印刷解像性を低下させることがあります。
3.濡れ性  充てんのメカニズムで版開口部に到達したインキ・ペーストは、基材表面に濡れ広がり密着して、版離れします。基材との濡れ性が悪い場合には、濡れ広がりに時間がかかり、部分的に欠けが生じることがあります。
4、粘性 ものの「かたい」「やわらかい」を表わす性質の一つで、「せん断速度」と「せん断応力」を測定して流動のし難さである粘度を測定します。粘度が高いと流動しにくく、粘度が低い流動しやすくなります。スクリーン印刷用のインキ・ペーストは、粘度だけでなく、もう一つの性質である弾性を兼ね備えていなければいけません。
5.弾性 ものの「かたい」「やわらかい」を表す性質の一つで、「応力」と「ひずみ」を測定して、変形のし難さである弾性特性を測定します。粘度が低くてもだれにくいインキは、弾性特性が高いと考えられます。
印刷性の判断では、粘性特性だけでなく弾性特性を意識することが重要です。インキ・ペーストの流動及び変形特性という意味で粘性と弾性を合わせ粘弾性とよびます。

高品質スクリーン印刷の例

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