スクリーン印刷の基本と標準 

スクリーン印刷とは

スクリーン印刷は、「特殊」印刷です。だから、安定なのです。

スクリーン印刷は、バッド印刷と並び、「特殊印刷」の一種とされています。このため、スクリーン印刷は、特殊な印刷だから管理が難しいと、思っている人が多いようです。実は全く逆です。スクリーン印刷は、特殊であるため、他の一般印刷工法より安定しているのです。
では、他の一般印刷工法(平版、凸版、凹版)に無くて、スクリーン印刷に有る物は何でしょう?
以下の三つであると考えます。
@スキージ スクリーン版上のインキ・ペーストを掻きとるゴム製のヘラです。印刷の際、スキージに角度をつけて摺動させインキに下向きの力(*充てん力)を与えることができるため、基板凹面への印刷や積層印刷が可能になります。  
A版の孔(メッシュ) 孔を通して版上のインキを画線部である乳剤開口部に充てんする原理で、印刷毎に常に新しいインキが画線部供給されますので、インキが乾かず安定して連続印刷が可能になります。
B版の反発力 インキを乳剤開口部に充てん後、スクリーン版の反発力で、版を基板から引きはがすことができるため、スキージ移動に追随した「版離れ」が実現できます。このため、フィルム基材の上でもにじみなく安定した連続印刷が可能です。
 
以上のように印刷の原理が特殊であるため、スクリーン印刷は「印刷安定性」が非常に高いといえます。
一般印刷のように、印刷品質が安定するまでの多数のダミー印刷は、不要です。
装置の原因で印刷品質が低下することはありませんので、通常は「保守費用」は発生しません。
版とインキが適正なら、スクリーン印刷は手刷りでも、高品質な印刷ができるのも、この特殊性の為です。
また、電極や絶縁材料を厚い膜で積層することができるため、エレクトロニクス業界では「標準印刷」のプロセスとなっています。
しかしながら、前提条件を適正化しないでスクリーン印刷を行っているケースも非常に多く、「管理が困難なプロセス」と思われていることも事実です。
 
*充てん力(佐野造語) 印刷の際、スキージ移動によりインキ・ペーストに与えることができる版開口部への充てんの力(エネルギー)。スキージ角度が小さいほど、スキージ速度が遅いほど「充てん力」が大きくなる。「充てん力」が大きすぎるとにじみが発生し、小さすぎるとカスレが発生する。

 

各分野でのインキ・ペースト粘度

スクリーン印刷以外の印刷では、適正な粘度範囲がある程度決まっています。これは、それぞれの印刷に適した粘度範囲が狭く、印刷理論も確立しているためだと思います。インキ・ペーストが粘度範囲から外れると印刷自体が全くできなくなると思われます。
これに対し、スクリーン印刷では、数パスカルセカンドから数百パスカルセカンドまで、非常に広い範囲おいんき・ペーストが使用されています。これは、スクリーン印刷がメッシュ仕様や印刷条件を変えることで非常に広い範囲での粘度のいんき・ペーストが使用出来る証といえます。
しかしながら、それぞれの分野の印刷技術者にとっては、比較的狭い粘度範囲での印刷経験しかなく、別の分野のスクリーン印刷に関しては、全く別の技術であるかのような認識の方が多いようです。
例えば、積層セラミックコンデンサー(MLCC)の分野での内部電極のスクリーン印刷では、ニッケルペーストをグリーンシート上にできるだけ薄く印刷することが求められ、フィラーであるニッケル含有量を極限まで少なくする必要があります。このため、溶剤含有量が多くなり、非常に低粘度のものが使用されています。一方、100μm以下のライン幅の電極をフィルムの上に印刷するタッチパネルの分野では、印刷解像性を向上させるため比較的粘度が高い銀ペーストが使用されています。これらは同じエレクトロニクス分野でも、一方の印刷技術者からの他方の技術は、全く別の印刷技術のように見えていると思われます。
加飾印刷の分野では、市販のインキに20〜30%程度の溶剤を添加して、非常に低粘度で使用していましたが、最近では、銀ペーストに近い粘度のインキも使用され始めました。従来のインキになれた技術者には、なかなか頭の切り替えができないと思われます。
近年、スクリーンメッシュや製版技術の進歩で、従来よりもかたい(「粘弾性」が高い)インキ・ペーストが使用できるようになりました。つまり、メッシュ強度が向上し、従来よりも大きなスクリーン反発力を得ることができるようになり、版離れの悪いかたいインキ・ペーストにも対応できるようになりました。
「ペーストプロセス理論」の考え方で印刷プロセスを再構築する事で、今よりもかためのインキ・ペーストの方が適正となる分野も数多くあることに気づくことができると思います。
スクリーン印刷とは

スクリーンメッシュ

スクリーンメッシュには、大きく分けて合成繊維メッシュと金属繊維メッシュがあります。高品質スクリーン印刷の目的では、合成繊維は、ポリエステルメッシュ、金属繊維は、ステンレスメッシュが使用されます。
スクリーン印刷とは

 

スクリーンメッシュは、線径、メッシュ数、メッシュ厚み、そしてメッシュ強度を把握して選択してください。メッシュピッチ、メッシュ開口(μm)、開口率は、線径とメッシュ数の値から算出できます。
ポリエステルメッシュの線径のカタログ値は、織網前の線径であり、織網後は、写真のように線材が扁平し、線幅が約20%程度大きくなります。このため、メッシュ開口率も約20%程度小さくなります。ステンレスメッシュは、織網しても線径が変わらない為、カタログ値と同じです。なお、ステンレス以外の材質のメッシュでも、線径、メッシュ数、メッシュ厚み、メッシュ強度で選択することは同じです。
スクリーンメッシュの強度は、線材の単位断面積当たりの強度に1本当たりの断面積と単位幅あたりのメッシュ数を乗ずることで推測できます。スクリーン印刷の最も重要なメカニズムであり、適正化を最初に考えるべき「版離れ」を実現するために、十分な強度のスクリーンメッシュを心がけてください。
私は、ステンレスメッシュは、線径28μmの325メッシュ(BS325)を基準として、他のステンレスメッシュの強度を推測するようにしています。この値を「強度指数」と呼び、スクリーン版のテンションやクリアランス量の適正化の標準としています。これらの標準は、私が過去に42インチPDPの印刷を行った経験から設定したものです。ポリエステルメッシュは、線径40μmの250メッシュを標準としています。
 

スキージ

スキージは、他の印刷にはなく、スクリーン印刷だけにある特徴的なものです。スキージの存在で、スクリーン印刷は、他の印刷に比べ、低い印圧での印刷ができるため、厚い膜厚での均一な積層印刷が可能になります。
スキージの英語のスペルは、Squeeze ではありません。Squeegeeです。前者は、絞り出すという意味で、後者は、窓ガラスを拭くゴムのヘラの意味です。スキージは、インキ・ペーストを絞り出す、押し出すものではなく、スクリーン版上の余分なインキ・ペースト掻きとるものです。掻きとることで、基材に接触したスクリーンメッシュ開口部のインキ・ペーストがメッシュと分離し、基材上に均一に転写されるのです。
スキージには、次の三つの働きがあります。
  @スクリーン版を介して基材に均一な接触圧力を加える。
  Aスクリーン版の余分なインキ・ペーストを掻きとる
  B版開口部のインキ・ペーストに対し、下向きの吐出圧力を加える。
スキージは、適度な弾力性があるゴム製でなければいけません。メタルマスクのような硬質のスキージでは、スクリーンメッシュ開口部のインキ・ペーストを押し出すことはできません。また、スキージは、インキ・ペーストに含有されている溶剤に対して耐性がなければいけません。そして、スキージエッジは、*機械研磨で直線に仕上げされなくてはいけせん。
スキージは、以上の要件を満たし、上の三つの働きができるような適切な形状でなければいけません。
以上のことを考慮すれば、おのずから適正なスキージ形状、品質が決定します。
 
*スキージは、機械研磨でエッジを直線にしたあと600〜1000番のサンドペーパーで0.2mm程度の「面取り仕上げ」をして使用することをお薦めします。

4つの印刷条件

スクリーン印刷には、多くの印刷条件があると思われていますが、ほとんどが適正化すべき「前提条件」であり、本当の意味での印刷条件は、クリアランス及びスキージ印圧、角度、速度の四つだけです。
それぞれの印刷条件が印刷品質の何に影響を及ぼすかを考えることで、適正化が容易になります。
  A クリアランス   版離れや寸法精度に影響を与えます
  B スキージ印圧  版上のインキ・ペーストの掻き取りに影響します
  C スキージ角度  インキ・ペーストに対する下向きに吐出の方向を決めます(充てん力)
  D スキージ速度  充てん力の微調整と版離れに影響します
スクリーン印刷とは
スキージ角度と速度は、インク・ペーストに対する「充てん力」を増減し、にじみ、カスレなどの印刷解像性に影響を与えます。また、穴埋め印刷時の充てん性に影響与えます。
高品質スクリーン印刷のための四つの印刷条件設定の順序は次のとおりです。
  @印刷均一性、安定性の確保  
  A印刷寸法精度の維持
  B印刷解像性向上又は、印刷膜厚の微調整
従来の手法では、Bの印刷解像性向上や印刷膜厚の整合に重きを置き、印刷条件を変更していたために、量産印刷で最も重要な印刷均一性を損なっていたと思われます。
 

粘度の測定

これまで、スクリーン印刷でのインキ・ペースト粘度の測定には、標準がなく、数字だけを聞いてもイメージがわかないことがあります。そもそも粘度とはどのように計るのでしょうか。
正しい粘度は、せん断速度とせん断応力を測定することで算出できます。せん断速度は、液体を挟んだ二枚の平行版の片方を固定し、もう一方を1000μm/secで移動させたときに、二枚の板の距離が100μmであった場合、1000μm/sec÷100μmでせん断速度は10μm/sec となります。二枚の板の距離が10μmの時は、100μm/secとなります。つまり、せん断速度とは、測定すべき液体を対抗する板で挟み、その速度と距離を精密に制御して設定するものです。せん断応力も同様の条件での回転センサーを止めようとする力となります。
粘度計には、左図のようなセンサーが液体中で回転するB型粘度計と右図のような円錐状のセンサーで液体を挟むE型粘度計があります。通常、よく使用されている回転粘度計は、B型粘度計のような構造であり、この構造では、せん断速度やせん断応力は測定できません。つまり、正確な意味での粘度が測れないものです。表示される粘度の値は、何らかの換算した値だと思いますが、すべてのインキ、ペーストで正しい粘度値を示しているとは限りません。一方、E型粘度計は、円錐状のセンサーを使用し、先端のギャップを精密に制御する事で、正確な粘度が測定できます。
スクリーン印刷用のインキ、ペーストは、せん断速度が大きくなると粘度が低下する特性を有していますので、回転粘度計の回転数で粘度の値が異なります。大手インキメーカーでは、E型粘度計での5rpmでの2分後の粘度値を使用していますので、私もこれを標準にしています。
スクリーン印刷とは

スクリーン印刷機

スクリーン印刷機とは、基材を固定し、スクリーン版をセットし、スキージを動作させる装置であり、量産印刷において、装置の不具合で印刷品質が低下することは、ほとんどありません。
スクリーン印刷機は、スクリーン版の形状とスキージの動作の違いで3種類に分けられます。
フラットベッド 最も多く使用されている通常のスクリーン印刷機のタイプです。スクリーン版は、矩形の枠にスクリーンメッシュを貼った平型版です。フラットの印刷テーブル上に基材を固定し、スキージを移動させて印刷します。ロールtoロール印刷の場合は、間欠送り機構になります。
シリンダースクリーン版は、フラットベッドと同様の平型版です。 ボトルの曲面印刷機と同様の構造で円筒形のシリンダーの側面に吸着した基材に印刷するタイプです。スキージは、固定したままでスクリーン枠を水平に往復移動させ、それに同期させシリンダー回転させます。枚葉高速印刷に有効です。
ロータリースクリーン 円筒形のスクリーン版を使用し、スキージを固定して、円筒形版を回転しながら               印刷します。版を円筒形にする必要があり、版にテンションをかけることができない為、剛性のある開口率の小さい板状のメッシュシートを使用します。低粘度インキを使用した高速捺染印刷に有効です。
いずれの印刷方式でも、印刷品質は、使用するスクリーン版の仕様、品質とインキ・ペーストの印刷性能で決定されることは同じです。
スクリーン印刷とは

「技術限界」とスクリーン印刷

いかなる印刷も刷版の品質にインキ・ペーストの印刷性能が追随して技術が進歩をしてきました。逆はありません。例えば「このインキは、10μmラインの印刷ができるが、残念ながらその刷版がまだ無い。」とは言えません。
一般印刷である平版オフセット、グラビア、フレキソ印刷では、既に15年以上前に刷版の技術限界の製品が開発され、インキも印刷品質の面では、技術限界に達したと言えます。
昨今、急成長を遂げている「ネット印刷」の会社は、ほとんどは社内で印刷を行いません。なぜなら、どの外注先に委託しても印刷品質は同じであるからです。つまり、ほとんどの印刷会社が技術限界の90%以上のレベルで量産を行っていると言えます。なお、これら、一般印刷での現在の課題は、印刷品質でなく、多品種少量生産への対応となってきています。
一方、スクリーン印刷では、未だに、ほとんどの会社が技術限界に達しているとはいえず、難易度の高い印刷では、特定の印刷加工メーカーしか請けることができません。私の考えでは、一部のエレクトロニクス関連の印刷分野を除いて、ほとんどが、スクリーン印刷の技術限界の50%程度しか活用していないと思われます。私が考えるスクリーン印刷の技術限界とは、技術限界レベルのスクリーンメッシュと刷版を使用して、インキ・ペーストの印刷性能と機能を極限まで高めた安定性の高い量産印刷のことです。
多くのスクリーン印刷が、技術限界の50%程度しか活用してないということは、逆に考えれば、技術とビジネスのこれからの「伸びしろ」が非常に大きい分野であるとも言えます。今でも、従来のスクリーン印刷のレベルでもそれなりにビジネスが成り立っているのですが、正しい考えで技術レベルをさらに向上させることで、プロセスを安定させ、コストを低減するとともに他工法などを代替できる可能性も大きくなるということです。
製造業で利益を上げる最も有効な手段は、設備コストを抑制し、必要なものを必要なだけ、必要な時に高い歩留まりで作ることです。スクリーン印刷は、一般印刷工法と比べて、生産速度は劣りますが、設備コストが廉価で多品種少量生産にもっとも向いている印刷工法です。また、エレクトロニクス分野で利用されているフォトリソプロセスなどの「サブトラクティブ工法」に対して、スクリーン印刷は、本当の「アアディティブ工法」であり、材料使用効率が高く、環境負荷を低減できる利点があります。
「ペーストプロセス理論」の考え方でスクリーン印刷を「技術限界」に近いレベルで活用することで、製造プロセスのコスト低減と低環境負荷を両立し、新たな市場が創造できると期待します。


ホーム RSS購読 サイトマップ
トップページ 会社概要 スクリーン印刷とは ペーストプロセス理論 問い合わせフォーム