株式会社エスピーソリューション代表取締役 佐野 康
エレクトロニクス分野のみならず加飾・グラフィックなどの工業印刷の分野すべてのスクリーン印刷に共通する整合性のある理論を用い、総合的な技術支援を行います。
スクリーン印刷の基本に基づき、前提条件を適正化し、最適な手順でアプローチすることで、真の課題を抽出し、課題解決までの期間を最短化します。
これまで、スクリーン印刷が「管理困難」だと思われてきたのは、スクリーン印刷自体が難しいのでなく、これまでの管理手法が間違っていたと考えるべきです。私が提案する「ペーストプロセス理論」の考え方で、すべてのスクリーン印刷プロセスを管理することができます。
これまで、スクリーン印刷が「管理困難」だと思われてきたのは、スクリーン印刷自体が難しいのでなく、これまでの管理手法が間違っていたと考えるべきです。私が提案する「ペーストプロセス理論」の考え方で、すべてのスクリーン印刷プロセスを管理することができます。
技術コンサルタントですが、技術情報を発信します。
私は、2000年10月から高品質スクリーン印刷プロセスの技術コンサルティングを行ってきました。
エレクトロニクス分野の成膜・パターンニング技術、SMT分野でのクリームはんだ印刷、プリンテッドエレクトロニクス、MEMS分野やグラフィック・加飾印刷分野での高品質スクリーン印刷の技術支援を行ってきました。
この間、スクリーン印刷の要素技術の進歩は、著しいものがあり、私は、常に最先端の最適な技術を取り入れながら顧客企業への技術支援を行ってきました。数多くの分野でのスクリーン印刷を経験することで、具体的な技術指導、支援の方法に修正を加えながら、自らの理論を実証しながら自身のコンサルティング能力を高めてきました。
しかしながら、昨今の技術セミナー受講者の意見を聞くと、未だに多くのスクリーン印刷の現場では、旧態依然とした考え方が根強く残っており、私が考えるあるべき姿の技術レベルとの乖離がますます大きくなっていると感じています。
この乖離を小さくし、より多くのスクリーン印刷の分野で、より多くの方にスクリーン印刷のプロセス技術としての素晴らしさを理解し、信じていただく契機となるように、本サイトで技術情報を発信することにしました。
これまでのように、「こうやったらうまくいきました。試してうまくいけば使ってみてください。」ではなく、「高品質スクリーン印刷はこのように管理してください。なぜなら*****だからです。」と手法と理由を併せて発信したいと思います。理にかなっている考え方かどうかを判断いただきたいと思います。
「ペーストプロセス理論」の考え方を深く理解し、正しく実践することで管理できる高品質スクリーン印刷プロセスが必ず構築できると確信します。当社の業務は、各分野のスクリーン印刷を信じる顧客に対し、課題に合わせた最適な技術支援を行い、最短の期間で解決することです。
スクリーン印刷の進歩と印刷理論
スクリーン印刷は、スクリーンメッシュ・版やスキージ、印刷機の技術進歩にインキ、ペーストの印刷性能が追随し、特に1990年からの四半世紀で著しい技術進歩を遂げました。しかし、これらのスクリーン印刷の技術進歩の本当の意味での恩恵を受けることができたのは、一部の特定の製品分野での経験者に限り、真にこの技術の素晴らしさを理解し、可能性を信じる人は,まだまだ少ないと思います。
1990年代初頭、私は、エレクトロニクス分野でのスクリーン印刷の最先端分野でこの技術の真のポテンシャルを目の当たりにし、多くの先輩、同僚に原理やメカニズム、管理手法について質問しましたが、納得のいく、整合性のある回答は得ることができませんでした。当時は、スクリーン印刷のどの分野でも、明確な理論がなく、それぞれの分野での経験に基づく多くの技量、テクニックだけが存在し、スクリーン印刷は経験が必要な職人芸的技術であると思われていました。
私は、スクリーン印刷にも本来理論があるはずであると考え、無いのであれば、自分で仮説を立て、検証、修正を繰り返し、独自の考え方で理論を構築してきました。その後、数多くの印刷経験や優れたペースト技術者の助言から、インキ・ペーストの側から印刷プロセスを解明することで多くの現象が説明をつけられることに気が付きました。最近では、グラフィック・加飾印刷の分野のスクリーン印刷でも、同様の考え方で管理可能になる事が理解され始め、私自身も、すべての分野のスクリーン印刷が共通の考え方で管理できると確信できるようになりました。
しかし、未だに多くの方は、スクリーン印刷に対する誤解やプロセス技術としての不信感を抱いていると思われ、この技術がものづくりの現場に十分に活用されているとは言えません。その理由は、スクリーン印刷における正しい技術情報が絶対的に不足していることと、狭い範囲の経験に頼っただけの正確でない技術情報が氾濫し、それによりネガティブなイメージも蔓延しているためだと思われます。
私が考える正しい技術情報とは、単なる経験だけからの対処療法的な手法でなく、どの角度から検証しても納得できる理論があるということです。私が25年間の多方面での実践経験で検証し構築した印刷理論である、インキ・ペーストの身になって考える「ペーストプロセス理論」に則り、技術情報を公開させていただきます。
ペーストプロセス理論
「ペーストプロセス理論」は、私が25年間の実践と検証から構築した、全ての分野のスクリーン印刷に,
共通するプロセス構築の考え方です。
スクリーン版条件と印刷条件は、云わば、高品質印刷のための「前提条件」であり、印刷品質はインキ・ペーストの有する固有の印刷性能により決定されると考え、逐次的に要素技術の適正化を行います。
インキ・ペーストの印刷性能は、揮発性、濡れ性及び粘性と弾性でほとんど決まります。高品質スクリーン印刷プロセス構築とは、「前提条件」を適正化し、インキ・ペーストの機能を維持しながら印刷性能を向上させることです。
従来のスクリーン印刷の考え方は、左図のように三つの要素の重なったポイントを探し出すというもので、いわば三つ巴の考え方です。この考え方では、三つの要素が等分の影響力を持っているかのように考えがちです。実作業では、印刷作業者は、自分では、変更しにくいインキ条件やスクリーン版条件を固定して、変更が容易な印刷条件だけを熱心に変更することになります。スクリーン版業者は、メッシュ仕様や乳剤の種類を頻繁に変更しようとします。インキ・ペースト業者は、顧客の印刷条件に合わせて、むやみに性状を改質します。このような方法で、時間をかけて、見つけた最適条件は、結果的に非常に狭い範囲でしか再現できず、量産時のプロセス安定性を損ないます。
「ペーストプロセス理論」では、高品質な印刷のための適正な印刷条件とスクリーン版の条件は、目的によりおのずから決まっており、それを前提として印刷した結果は、インキ・ペーストの印刷性能で決定するという考え方です。このため、前提条件の適正化となぜそうするべきかの考え方が最も重要となります。
メニュー「ペーストプロセス理論」でもう詳しく説明します。
なぜ、これまでスクリーン印刷が管理困難と思われてきたか
「ペーストプロセス理論」では、高品質スクリーン印刷のため印刷条件のほとんどは、適正化すべき「前提条件」であると考えます。
実は、これまで、スクリーン印刷が「管理が困難」で「技量が必要」と思われてきたのは、多くの前提条件が適正化していなかったためであると考えられます。適正化できなかった理由は、いろいろあると思いますが、「印刷条件で、何とかできる。」という安易な考えもあったと思います。前提条件が適正化していない場合、高品質な印刷を目指すためには非常な困難さを伴いました。これまでは、適正化されていないスクリーン版やインキ・ペーストに合わせて印刷条件を最適化しようとしていたケースが非常に多いと思われます。例えば、ファインライン印刷の目的で従来よりも高メッシュのスクリーン版を使用した際に、メッシュ強度が低下し、良好な版離れが実現できなくなることがあります。これに対応しようとインキ・ペーストの粘度を下げると印刷解像性が低下し、さらに印刷難易度が向上します。
また、前提条件が適正化されていなかった理由は、スクリーン印刷は、使用するインキ・ペーストに合わせて印刷条件を合わせるのが「職人のウデ」だという考えも根強く残っており、真の適正化が妨げられていたと思われます。
これまで、スクリーン印刷のスクリーンメッシュ、版、スキージ、印刷条件に明確な「標準」がなかったことも原因の一つです。社内のスクリーン印刷の標準はあっても、なぜそのようにするのかの明確な理由がないまま、いつもと同じという意味の「標準」としている場合があります。適正化されていない「標準」が数多く存在します。
また、この製品を使用するとよい結果が出たとする数多くの資機材が世の中に溢れており、どのような条件でどのようなケースで使用すべきかの明確な基準がありませんでした。例えば、スクリーン版のテンションは、高い方がいいのか、低い方がいいのか。スキージ印圧は、低い方がいいのか、高い方がいいのかに関しての明確な指針がありませんでした。
「ペーストプロセス理論」では、明確な考え方で「前提条件」の適正化のための独自の標準を決めています。
「前提条件」の適正化と標準化
スクリーン印刷の品質は、版とインキ・ペーストで決まります。印刷条件とは、クリアランスとスキージの動きである、印圧、角度、速度です。
スクリーン版の品質は、スクリーンメッシュと紗張り、そして乳剤で決まります。
スクリーンメッシュの品質とは、線径、メッシュ数、厚み及び強度です。
スクリーン印刷は、印刷の際に版と基材の間隔をあけ、スキージにより版を押し下げその反発力で「版離れ」をさせる「オフコンタクト印刷」です。スクリーン印刷におけるもっとも重要なメカニズムは、版の反発力による「版離れ」です。高品質スクリーン印刷とは、先ず、良好な「版離れ」を実現することがすべての基本となります。
高品質スクリーン印刷の「前提条件」の適正化すべき項目を示します。
@良好な「版離れ」のための十分な強度のスクリーンメッシュの選択 強度指数の把握
A印刷画像に対し十分な大きさで強度の高いスクリーン枠の選択
Bスクリーンメッシュの強度と適正な版テンション
Cスクリーン版の適正な乳剤厚、品質、寸法精度
D印刷テーブルへの基材の適切な固定
E適正なクリアランス
F適正なスキージ形状、品質と研磨状態
G適正なスキージ印圧
H適正なスクレッパー条件
I適正なスキージ、スクレッパーストローク
J乾燥条件
K印刷環境の温度と湿度 静電気と異物対策
など
「コンタクト印刷」と「オフコンタクト印刷」
クリームはんだを印刷するSMTの分野では、メタルマスクと基材を接触させ、ペーストを充てんした後、版を剥がして版離れさせる方式が採用されています。この印刷工法を「コンタクト印刷」とよぶことから、通常のスクリーン印刷のことを「オフコンタクト印刷」とよぶようになりました。「オフコンタクト印刷」であるスクリーン印刷は、スクリーン版と基材との間に隙間(クリアランス、ギャップ)を設定し、印刷の際にスキージで版を押し下げ、インキ・ペーストを版開口に充てんした後、スキージ移動に追随させ版離れをさせる工法です。この版離れを「コンタクト印刷」での版離れと区別するために「同期版離れ」とよぶことにします。これに対し、「コンタクト印刷」の版離れは、ペースト充てんとの間に時間差があるため「時差版離れ」とよびます。
「同期版離れ」の原理であるスクリーン印刷で、もっとも重要な前提条件とは、版離れをスキージ移動に追随させ同期させるということです。版離れが遅れると、印刷解像性や膜厚均一性が低下します。
一部の限定条件での印刷手法として、スクリーン版使用の場合にでも、「コンタクト印刷」で、ペースト充てん後、時間差でスクリーン版を引きはがし版離れさせることがありますが、高品質スクリーン印刷を実施する目的では絶対にお薦めできません。
スクリーン印刷は、同期版離れを実現させることを前提として、スクリーンメッシュ強度、版テンション、スクリーン枠サイズ、クリアランス等を適正化する必要があります。
メタルマスクでの「コンタクト印刷」は、1990年代初頭、粒子が大きいはんだ粒子を含有する高粘度のペーストを多量に塗布したい目的のために考案された工法です。本来のスクリーン印刷から派生した、特殊な印刷工法であると考えるべきです。「コンタクト印刷」は「時差版離れ」というスクリーン印刷としては、特殊なメカニズムですが、印刷装置、メタルスキージ、クリームはんだなどの要素技術の進歩でSMT実装分野での標準工法となっています。
「同期版離れコンタクト印刷」 クリームはんだ印刷の新工法
近年、0402や0201サイズの微小電子部品の実装のためのクリームはんだ印刷において従来の「コンタクト印刷」では、「欠け」や塗布量のばらつきの問題が大きくなってきました。
この原因は、下図のように、「時差版離れ」では、マスク開口へのペースト充てん後、開口部のペーストが時間経過で「疑似固体化」し、版離れさせる為であり、この工法の原理的な問題であると考えられます。
これに対して、「同期版離れ」の通常のスクリーン印刷は、ペーストを流動状態のまま充てん、版離れを行うため、「欠け」が発生せず、塗布量のばらつきも小さくなります。
従来のコンタクト印刷の利点と通常のスクリーン印刷の「同期版離れ」を組み合わせた「同期版離れコンタクト印刷」工法を提案します。この新工法は、メタルスキージの前方部では、マスクと基材はコンタクト状態であり、マスクの開口が大きい場合でも、ペーストがストローク方向に漏れてにじむことはありません。後方部では、スクリーン版の反発力で流動状態のペーストがメタルスキージの移動に追随する「同期版離れ」を実現しています。
インキとペースト 機能と印刷性能の両立
このサイトでは、スクリーン印刷される流動体の呼称としてインキ又はペーストという用語を使用しています。英語名ink は、インクとよばれることもありますが、(社)日本印刷産業連合会での正式名称はインキとのことであり、こちらを使用します。ペーストとは、エレクトロニクス業界でよく使用される言葉で、比較的粘度が高いペースト状のインキのことを指します。大手のインキメーカーでは,印刷インキをリキッドインキとペーストインキに分けて呼ぶこともあるようです。インキもペーストも印刷される材料のことで同じ意味で使用できます。加飾インキ、エッチングレジストインキ、厚膜ペースト、銀ペースト、絶縁ペーストなどがあります。
本サイトで提案している「ペーストプロセス理論」の考え方では、高品質スクリーン印刷における条件のほとんどは、「前提条件」であり、適切な知識と論理的な考えで、適正化し、標準化することが可能です。印刷条件も適正な印刷条件範囲が決まっており、高品質スクリーン印刷のためには、インキ・ペーストの印刷性能と機能を両立する事が最も重要であるとしています。
現在、インキ・ペースト以外の要素技術のすべては、日本国内で調達可能です。正しい知識と経験で適切なサプライイヤー、製品を選択することが可能になります。しかしながら、それぞれの応用分野で、高い機能と印刷性能を兼ね備えたインキ・ペーストを入手するには困難が伴うことが多々あります。なぜなら、現状では、インキ・ペーストのサプライヤーの印刷性能に対する認識がバラバラで定まっていないからだと思われます。未だに、「印刷品質は、顧客が技量を使って何とかしてくれる。」と期待したり、逆に適正でない前提条件の下での、顧客の我儘ともいえる要求に応えようと努力したりしているとも思われます。正しい考え方で作った印刷性能が高いインキ・ペーストは、前提条件」を適正化していれば、誰が印刷しても、「必ず良い結果が出る」と信じるべきです。
インキ・ペーストサプライヤーと印刷加工メーカーの双方が「ペーストプロセス理論」を正しく理解し、実践を繰り返すことで、機能と印刷性能を両立したインキ、ペーストが数多く市場に出回ることになると思います。